全国の医学生をメインに結成し、「小児診療のための医学生・研修医ネット こどもどこ」を始め様々な学生団体や企業の協賛を得つつ、他学部の学生や職種とコラボレーションし、正しい抗菌薬の使用についての啓発活動を行う。
100年後に抗菌薬を残し、未来の子供たちの笑顔を守るプロジェクトとして「Smile Future JAPAN」を2015年度から開始した。学生という立場は、他学部の学生や職種と垣根がなくコラボレーションできる特徴があり、また医学生は医師と市民の間にいて、より市民に近い目線で活動することができるという強みがある。この強みを生かして、多様な方法でより多くの人に薬剤耐性菌について知ってもらいたいと考えている。
現在仙台、東京、沖縄の3箇所でプロジェクトが動いている。
Q.1 抗菌薬は実際にどのくらい投与されているのですか?
A.1 1日に200万人の人が抗菌薬を飲んでいます。
2013年のオランダのある研究では、風邪の子どもの36.5%に抗菌薬が投与されていました。そこでは年齢が高い(12歳以上で最多)方が投与される割合が高いという報告がされています。日本では細かいデータはあまりないのですが、2009年、2011年、2013年の抗菌薬の販売データから推測すると、1日に200万人の人が抗菌薬を飲んでいるという計算になります。そのうち、90%は内服薬なので、入院している人よりも外来でもらっている人が多いと推測されます。
また、少し古いですがある企業において2005年の1〜3月のレセプトから計算すると風邪の人に対して60%の人に抗菌薬が投与されている計算です。また東日本大震災時に処方された抗菌薬のうち、91%は不適切な投与だったという報告もあります。
医者に対するアンケート結果によると、熱がある患者さんに対して抗菌薬を投与する割合が10%以下の人が37.5%でしたが、50%以上に投与してしまうという医者も8%程度いました。
Q.2 風邪に対して抗菌薬は実際どの程度効くのですか?
A.2 抗菌薬治療を行わず治療した場合でも、抗菌薬治療の場合に比べて治癒率に大きな差は見られません。
1998年に発表された6本の研究を統合的に検証した論文では、上気道炎(風邪)に対して、抗菌薬を投与した場合としなかった場合、5〜7日後に状態がどうなっていたのかを12歳までの1699人を対象にして調査したところ、抗菌薬治療を行わず治療した場合でも、抗菌薬治療の場合に比べて治癒率に大きな差は見られず、合併症や副作用に関しても大きな差がみられませんでした。
また、イギリスにおける大人の風邪の患者さんに対する研究では、重症肺炎になる患者を1人減らすためには、12,255人の患者さんに抗菌薬を投与する必要があるとの報告があります。
Q.3 このまま抗菌薬が無闇に使われるとどうなるのですか?
A.3 抗菌薬が効かない菌、いわゆる耐性菌が増加します。
2004年の研究では、ヨーロッパの外来患者さんに使用された抗菌薬の総数と耐性菌による病気に罹った割合を調査し、抗菌薬を使えば使うほど耐性菌の有病率が増えているとの報告があります。
また、このまま抗菌薬の不適正使用が世界で続くと、2014年は薬剤耐性菌による年あたりの死亡数が70万のところ、2050年には1億人になり、地域別ではアフリカとアジアが大半となるとの報告が2014年にされています。